ジギングで八丈島を語る場合、日本海や内湾と違い黒潮の蛇行で海況が大きく変わることを知らなければならない。
沖縄からトカラ列島を経て、太平洋側を北上する黒潮だが、大きく分けて2種類の流路パターンがあり、ひとつは四国・本州南岸にほぼ沿って流れる「非大蛇行流路」と、もうひとつは紀伊半島から遠州灘をへて伊豆七島を大きく蛇行して流れる「大蛇行流路」である。
この蛇行現象を黒潮大蛇行(くろしおだいだこう)と呼ぶが、この黒潮大蛇行が発生すると、蛇行した黒潮と本州南岸の間に下層の冷たい水が湧き上がり、冷水塊が発生する。そして、この冷水塊は漁場の位置に重大な影響を与えることになる。
当然、八丈島はその紀伊半島から遠州灘の延長線上にあり、そこに出来る冷水塊から大きな影響を受ける。それは、黒潮が八丈島の南を通る場合と(青ヶ島から鳥島周辺)、北側を通る場合で(黒瀬、御蔵島、三宅島周辺)、その水温がまるで変わるからだ。
そして、その周期がエルニーニョ現象やラニーニャ現象と連動して4~5年周期になる場合もあるが、冷水塊の大きさでは1~2年で変わる事もあり、その盛衰が激しい場合は1~2か月でも変わる。
更に、冷水塊の上に黒潮本流が覆う場合や(上下の水温がまるで違う)、逆に黒潮が離れ、表層から200メートル下層まで同じような水温になる場合もある。それは、その都度で潮流や水温に変化が出るので予測し難い。
難しい話になったが、いずれにしても黒潮の流れる太平洋沿岸の中で、この八丈島は特別に海洋環境が変わりやすく、黒潮の流れによる影響を受けやすい島と云うことなる。
そんな複雑な潮の流れの影響を、顕著に受けるのはパヤオであろうか。八丈島のパヤオは、久米島や沖縄、宮古島のパヤオと同じように、水深500メートル以上の深い場所に入れられる。
しかし、沖縄などのパヤオは、潮流の影響を受けて潜ってしまう事などあまりない。それが八丈島の場合は、黒潮が近い状態で潮流が速いほど(特に大潮の場合)海中に潜りこんでしまう。更に、潮流だけではなく、2枚潮、3枚潮になって起きるケースであり、表水温の速さだけで判断はできないのだ。当然、魚の付き具合もパヤオに来てみなければ判らないと云う事になる。
島のジギングポイントも、その潮回りでは好ポイントであっても、潮が速く釣りにならない事など日常だ。それが、日替わりのように毎日変わることもあるので、いっそう始末が悪い。しかし、逆に考えた場合、フィールドとしては荒れ難い事になろうか。
先日だが、釣りビジョンの撮影があった(すでに皆さんは観たと思うが)。その時は島の南東側にある“小岩戸の浅根”、その水深30~60メートルで活性した。
一日目の撮影ではあまり釣れなかったが、2日目の午後アタリから一気に魚が入りだし、特に新商品の『スイムバード』130グラムで爆釣し、それは3日目まで続いた。しかし、3日目の午後には黒潮が島に寄ってきて、水温が2度ほど上昇する。そして、撮影の終了後は、全く活性することはなかったのだ。
これが島でのジギングが初めてのアングラーであれば、「スワッ、この場所には魚がいるっ!」となるのだが、これは数年で変わる幾つかのパターンの一つに過ぎない。毎年のように、同じ場所の同じ水深で釣れるとは限らないのだから、それは勘違いと云う事になる。
ただ、その中でも技術やテクニックがないと釣れない事も多い。とくに、あのタイミングでの『スイムバード』や『スムライダー・ショート』の125グラムは、まさにベストマッチした事になる。そして、この浅いポイントで荻原君や窪田君の見せたテクニックは、日本海、瀬戸内海、外房などでも傑出したものになろう。
9月の初旬に行われた撮影から、2か月ほど経ったであろうか。既に秋は深まり初冬の趣である。通年であれば更に水温が下がるので、30~50メートルの水深で、さらに活性してもおかしくない。
しかし黒潮本流は北上し、三宅島あたりに落ち着き、水温も3~4℃ほど上昇していた。これが八丈島である。しかし、水温は高めに安定しているので魚はデープゾーンに入っているだろう。そこでジギングに出ることにした。
この水温は水深120~200メートル辺りに魚が入っている確信がある。しかし、重いジグを使ったディープジギングでは、中々長時間のジャークをやり抜くことは難しい。今のところは釣果が上がらず、多くのアングラーが諦めて帰ってくる状況だった。
しかし、私はこんなジギングが嫌いではない。結局は『スイムライダー』の350グラムで、その日は160~180メートル台から4~8キロサイズのカンパチを6尾も釣る事が出来た。
この2~3年は冷水続きで、どうも深場での活性が少ない。しかし、本来は今回のようなデープゾーンジギングが八丈島の通常だろう。いずれにしても自然の読みにくい島のジギングは、その水深や潮流に合わせたメタルジグ選びが肝心である。
その点で、ネーチャーボーイズの、鉄ジグ、ステンレスジグは、何処のフィールドでも選びやすい。環境にも優しい鉄のジグは、魚に対してもオールマイティーだが、フィールドも選ばないと云う事だ。
パパ大津留